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    僕は猫に負ける  *1

    • 2008.11.14 Friday
    • 20:34
         僕は猫に負ける   *1



     アイツは、結構力があるやつなんだと、実感させられた。
    俺よりも細く、そして普段はふらふらしてるやつだけど
    殴られた頬はまだ熱を帯びてジンジンとしてたのをよく覚えている。
    「なぁ、廉人、お前が亜優子ちゃん泣かすようなことがあったら、次は俺がぶん殴ってやるから。」
    「分かった、分かった。まぁ、安心しろよ。そんなことはないから。」
    廉人は得意そうに笑った。
    俺の胸の中では悔しい、という思いでいっぱいだった。勿論、いろんな意味で。

     自分が癌であると知って、書き始めた台本は、
    ちょうど、殴られたこともあり、悔しさをいっぱいいっぱいに込めた内容にするつもりだった。
    でも、亜優子ちゃんのことも、廉人のことも
    いくら頭をひねって書いたって、最終的には、やっぱり2人を羨ましく思っている
    自分が表れて、少し、嫌になった。
     
     俺が病室暮らしになってから、亜優子ちゃんと廉人が一緒に
    お見舞いに来てくれたことがあった。
    「佳寿くん、大丈夫?」
    「うん、大丈夫だよ。心配ありがとう。」
    「ホントさあ、佳寿がいないとさみしいよ、俺。」
    廉人が笑うと、亜優子ちゃんは同じように笑った。
    この2人いつの間にやらとても似てきた気がする。
    「いつ退院出来そうなの?」
    「んー・・・・まだよく分からないらしい。でも、すぐ治るらしいから!」
    本当は、もう退院など出来ないと、あの時言ってしまえば楽だったのかもしれない。
    あまりにも、亜優子ちゃんが嬉しそうな顔をするものだから
    死ぬのが、とても、死ぬほど、怖いものと、思ってしまった。
     そして、その日の3日後くらいに、廉人だけが顔を見せに来た。
    「あれ?今日は亜優子ちゃん一緒じゃないの?」
    「っはは、残念でした!」
    「まあいいけど。」
    廉人は病室の椅子にどかっと座り、鋭い目つきで、こっちを見てきた。
    「佳寿、お前、もう短いのか?」
    いつになく、あまりにも真剣な顔をしているから、思わず笑ってしまった。
    「短いって何が?」
    「とぼけるな、もう長く生きれないんだろ?」
    「何で分かったんだ?」
    すると、廉人は俺と目を逸らして
    「お前の顔見てたら、全部分かるんだよ・・・。」
    と本当に聞き取りづらいほどの小さい声で、漏れるように言った。
    「俺さ、保険金、廉人たちにやるよ。」
    「は?何言ってんの?」
    「だってさ、俺、親もいないし、保険金あげたい人なんて、廉人たちくらいしか思い浮かばないから。」
    「そうじゃなくて!お前、もう、死ぬこと考えてんのか?」
    そう言われて、不覚ながらも、涙が出てきてしまった。
    廉人は、そんな俺を、とても優しい目をしながら、「まだ死ぬなんて、考えんなよ。」
    と言った。
    このとき、やっと、亜優子ちゃんが廉人を好きになったわけを知ったような気がした。

     そのあとも、何度か、廉人は俺に会いに来てくれた。
    来るたびに、亜優子ちゃんの話もしてくれたし、
    特に何を話すわけでもなく、椅子に座って、小説を読みながら寝ていたりすることもあった。
    ほかにも、食事制限がある俺に、おでんを買ってきてくれたり
    映画雑誌を大量に持ってくることもあった。
    「ほんとさ、廉人って猫みたいだよ。」
    「なんで?」
    「自由気ままだし、辛そうにしてるとこ見たことないし。俺、廉人みたいになりたかった。」
    すると廉人は満面の笑みを俺に向けて
    「それに、亜優子の彼氏だしな。」
    と付け加えたのが、なんだか気に入らないような、納得させられてしまったようなで
    こっちも笑うしかなかった。
    「俺は、佳寿になりたいと、思ってたよ。」
    「なんで?」
    「俺、佳寿の書く話、どれも好きなんだよ。そういう才能がすげえ羨ましい。」
    そう言われて、今、書いている台本のことを全て廉人に話をした。
    すると、廉人は、
    「亜優子にも早く読ませたい!」
    と言ったけれど、それは止めてほしいと、言った。
    亜優子ちゃんには、最後に読んで欲しいのだと、廉人に言ったら、ちゃんと分かってくれた。
    これが、俺が最後に残していくものであり、最後のお願いだった。


    *********************************
    アナザーストーリー第一段。
    まだ続きますよ!
    今回は佳寿目線です。話をちょっと深くさせてみたつもりですが
    大して深くなっていないという現状(゜゜)

    保険金の件、時代背景を、10年前にするのと(そんな描写ないけど)
    あと、親が居ない設定になってます。

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